ストリッパー図鑑
2013.09.25(wed) - 10.20(sun)
同時開催:渡辺克巳「HAPPY STUDIO!」
リンク:IMA ONLINE
原芳市写真集「ストリッパー図鑑」(1981刊)より、貴重なヴィンテージ・プリントを展示いたします。


1974年から1980年まで、ぼくは、関東のストリップ劇場で働く踊り子さんたちを撮影して巡っていました。その頃の劇場数は『季刊・芸能東西・遠花火号』に、300館近くあり、その劇場名と住所が印されています。現在はその十分の一に満たない劇場しかありません。
当時、ぼくが出合った踊り子たちは、ぼくより年上の人が多く、今会えばずいぶん年をとってしまっているのだろうと思いますが、その面影は、きっと変わらないのだろうと思います。そういうぼくだって、もう65歳です。
ここに、その頃に撮影し、その頃にプリントした写真を、そのまま展覧します。ぼくが愛してやまない踊り子たちの誇り高き肖像にちがいないと思っているのです。 (原芳市)



(c)Yosyiichi Hara
※展示会終了後も写真集は販売中です。現在在庫数は数冊です。
【写真集販売】

写真集 「ストリッパー図鑑」 1982年/でる舎・私家版
著者サイン本


ZINE 「ストリッパー図鑑」 2013年/発行 SEKKA
原 芳市
1948 東京生まれ
千代田写真専門学院中退
写真展
1973 「東北残像」キヤノンサロン・銀座
1980 「ストリッパー図鑑」銀座・大阪ニコンサロン
1981 「幟の遠景」三人展・新宿ニコンサロン
1983 「淑女録」ミノルタフォトスペース・新宿
1986 「曼陀羅図鑑」新宿大阪ニコンサロン
1987 「曼陀羅図鑑 II」ギャラリーK・福島
1993 「エロスの刻印」銀座・大阪ニコンサロン
2002 「現の闇」銀座ニコンサロン
2008 「現の闇 II」ギャラリー蒼穹舎・新宿
2009 「幻の刻」ギャラリー蒼穹舎
2011 「光あるうちに II」東塔堂・渋谷
「光あるうちにIII」Ban Photo Gallery・愛知県春日井市
2012 「光あるうちに」銀座ニコンサロン
「写真の会賞展」第24回写真の会賞 プレイスM・新宿
2013 「Japanese Art Photographers 107」企画展 アートフェア東京
「常世の虫」銀座ニコンサロン
「天使見た街」プレイスM・新宿
写真集
1978 「風媒花」でる舎・私家版
1980 「ぼくのジプシー・ローズ」ヤゲンブラ選書・晩聲社
第17回準太陽賞受賞
1982 「ストリッパー図鑑」でる舎・私家版
1984 「淑女録 原芳市コレクション」晩聾社
1988 「曼陀羅図鑑」晩聾社
1994 「1994ストリッパーズ名鑑」風雅書房
1995 「影山莉菜伝説」青人社
1999 「ストリップのある街」自由國民社
2000 「ザ・ストリッパー」双葉社
「ザ・ストリッパー 2」双葉社
2001 「ザ・ストリッパー 3」双葉社
2008 「現の闇」蒼穹舎
2010 「昭和ストリップ紀行」共著 ポット出版
2011 「光あるうちに」蒼穹舎
2013 「常世の虫」蒼穹舎
「天使見た街」プレイスM
原芳市と故渡辺克巳
渡辺克巳は1976年〜1981年、東京東中野で「ハッピースタジオ」という写真館を経営していました。原芳市もほぼ同時期、その「ハッピースタジオ」のある商店街を通り抜けた処に住んでいました。原は1974年〜1980年頃、ストリップ劇場を巡りながら踊り子さんを撮っていました。渡辺が30代半ば〜後半、原が20代後半〜30代前半でした。
原は住いと駅の往復に必ず通るその写真館の中で、渡辺が仕事をしている様子を目にしていました。「新宿の流しの写真屋」として渡辺の名を知っていた原は、その頃撮りためていた踊り子の写真をいつか見て貰いたいと思っていました。ある日、原はその写真館の扉を開け中に入ります。するとその瞬間、渡辺は「オォ!」と、まるで原を以前から見知っていたような言葉を発したそうです。原はその理由が分らなかったそうですが、後に渡辺と知り合った頃を「同じ処をウロウロしていた」と回想しています。
この「同じ処」には当然二つの意味があります。一つは、同じ東中野に生活圏としての場所があり、そこをウロウロしていたということ。二つ目は、原はストリップ小屋の楽屋や踊り子の、渡辺は新宿のゲイや風俗嬢などの狭間をウロウロしていたというわけです。つまり渡辺は、原をお客さんと思わず、瞬間的に同じ匂いのする人種だと感じたのではないでしょうか。
初めて会ったその日、渡辺は原の写真を見て「すごい!すごい!いいじゃないか」と自分事のように喜んでいたそうです。それから二人は、新宿で酒を呑んだり、渡辺の撮影に原が同行したりと、交遊が続いたそうです。「ぼくのジプシー・ローズ」(原芳市著)が晩聲社から1980年に刊行され、原はその晩聲社を渡辺に紹介します。そして1982年「新宿群盗伝伝」「ディスコロジー」(渡辺克巳著)が晩聲社から刊行されます。
原芳市と渡辺克巳、この二人は少なからず縁があったのです。
旅する=写真する、旅の中で逢いましょう、そして、億万の塵芥のようになりたいと云い、多くの写真を残して死んだ渡辺克巳。四角いファインダーに小さくすまう女たちに眩惑されながら、その踊り子に天使を見、遂に、遠いリオの天使にも導かれ、南米までサンバの踊り子たちを追いかけていった原芳市。二人に共通するのは、「自分の何故?」と「ひと様の何故?」の狭間で、あっちにぶつかり、こっちにぶつかり、路上をウロウロし、永遠に求める事は難しい「??」または「※※」を追い続ける姿のように思えます。そしてその??や※※を追い続ける限り、そこに映り込む写真は、永遠に色褪せず、いつの時代にも「今」という瞬間を鮮やかに蘇らせ続けるのでしょう。
高くもなく、低くもない、二人の写真家の写真展を同時開催できることを、幸せに思っています。(汐花)